『幸村』~真田戦記~Special Talk 松田 岳×田渕法明×山本健史×大塚雅史

作品ごとに俳優が集まり、激しいアクション、ダンス、殺陣を含む舞台を制作するブルーシャトルプロデュース(以下、BSP)。3月に大阪、5月には東京で新作『幸村』~真田戦記~を上演します。

2015年4月1日発行の劇団ひまわり広報誌『Here Comes the Sun』6号では『幸村』~真田戦記~の特集記事を掲載。この特集に掲載しきれなかった記事を本Webサイトで特別公開します。BSPメンバーの熱い想い、ぜひ舞台とあわせてお楽しみください。

■稽古の中で探り、深める、儚さ

田渕:第二次世界大戦『零式』、幕末『壬生狼』、で今回戦国時代『幸村』と、歴史を旅する、歴史を題材としたBSP。その『幸村』のアクションについて、新しい挑戦とか、ありますか?
大塚:あります、あります。幸村は槍やから。
田渕:そう、槍と刀をどう表現するかっていうのもね。ぼくは、ダイナミックかつ繊細かつ美しい、みたいなところを目指したいなと思います。あとは、前作『零式』が第二次世界大戦のお話で、今回は時代が戦国時代に遡るので、そこの時代を表現できたらいいな。
山本:時代を?
松田:合戦のアクションは、幕末とちょっと違うと思う。もっと重く、ずしっとした重量感のあるアクションだなと思っていて。
田渕:この時代の武将たちはみんながスターだから、それぞれの思いがぶつかりあうところの醍醐味をアクションに乗せていったらいいかなって思う。
松田:そうだね。
大塚:やっぱり、アクションの先には、生きるか死ぬかっていうね。
田渕:ドラマがね。
大塚:あるからこそ、死に様というか散り様というか、『壬生狼』『零式』とは、やっぱり違うものではありたいなって。儚さとか、切なさとか…なんかね、それをどう表現するかが今後の勝負になってくるんじゃないかって気がする。
山本:『ゼロ』シリーズは戦闘機乗りの若者たちがどう生きて、どう死んでいったかという話だったけれど、『壬生狼』や今回の『幸村』は、大事なものや立場が違う人たちが戦いあったりする。大事にしているものが違うもの同士が戦うと、刀の重みだったりとかが変わってくると思う。それこそ死に際に、儚さがあることになっていくんじゃないかなって。アクションだけどお芝居をちゃんと乗せてやることを、今回はいちばん求められている気がして。うまく言えないけど、「格好よく生きればいい」だけじゃない。
田渕:若者たちがどういう風に生きたかっていうテーマをずっと上演している気がするんですよ。でも、今回は生き様っていうよりかはどちらかというと、死に様。幸村は、負けると分かっていても立ち向かっていくわけじゃないですか。自分の義を通して、その中で散っていくっていう美しさ、やっぱりいいなあと思う。そこを意識しながら、どうやったら大塚さんの言う儚さというものが滲み出てくるのか、っていう。すごく、楽しみにしています。
大塚:武士道って、『幸村』の時代の武士に憧れて、『壬生狼』のひとがいて、またそれに憧れて、『ゼロ』シリーズの第二次世界大戦のひとがいて。それぞれの時代でちょっと違うと思う。圧倒的に寿命ってものに対するとらえ方も時代によって違うんじゃないかなと思う。時代を遡るにつれ、寿命は短いし。
田渕:やっぱり時代物やるときに最初に大事にするのって、死生観。『ゼロ』のときの時代と、『壬生狼』の幕末のときと、やっぱりその「死に生きる」ってところに対する価値観が違う。
松田:根本的なところですよね。
大塚:なんで戦うのか、なんで死ぬのが怖くないのかとか。なんで人を殺すのが怖くないのかとか。なんでそんな、怖さをおしてまで、大将のために命を張るのか、とか。それは毎回考える。最初プロットを立てるときは、ここでアクションやるとか書くけど、実際言葉として出していくと壁にぶち当たってくる。結局、分からないまま稽古に入るよね。とりあえず書いて、役者とともに考える。
田渕:それで強く、太くなっていくわけですよね。稽古の中で。
大塚:うん。だから、考えてほしいなって。
全員:はい。
大塚:答えを求めて、みんなが質問しに来る(笑)。
全員:(笑)
大塚:俺が聞きたい(笑)!
山本:分からないまま戦っているひともいますしね。
大塚:答え、がないのがほとんどかもしれないね。あるつもりとか、とりあえず答えを作って戦うとか。でもほんとはそれが自分の答えではないかもしれないから…なんか、この流れは『幸村』に反映させたい。
田渕:じゃあそこは探っていきましょう!
大塚:『幸村』、答えを見つけて戦っているように見えて見つけてないんじゃないか。
田渕:なんか、BSPらしさが出そうですね。

■真田幸村に感じるシンパシー

田渕:『「BSP」の、出演者にとっての魅力を教えてください』。僕は、やっぱり思いっきり挑戦ができることかな。外からオファーが来る場合って、得意な部分を求められることが多い。けど、BSPの場合は自分が苦手なことも求められる。そこがすごく自分にとっては魅力。成長できるな、って感じられる。
山本:つらいところでもあるけど、一番最初の『ゼロ』のときからずっと大塚さんが繰り返されてることで、まず、早い段階で限界を超える。自分のマックスを超えて、そこから新たなものが生まれてくる。自分の限界を超えた身体、精神状態でやるからこそ生きていける。舞台に出るとき、どうやって自分を生きればいいのかって考えるなかで、その限界にぶつかっていく間に答えが見つかるというか…なんかおかしいこと言ってる?
田渕:いや、言ってない!だから、限界にぶつかれるっていうのが、すごい、いいこと。
山本:です!
松田:…ふたりの話を聞いてると、俺の思ってるBSPの魅力ってなんなの?って。疑問が出てくる。
田渕:まだ分からなくてええんちゃう?
山本:でも、そこが役者としての魅力でもあるんじゃないかなって俺は思う。岳はもう何度も経験してると思うけど、若い子たちには、とりあえずぶつかってこいよ、っていう。
松田:そういう場ですね。僕は最初の『ゼロ』から『幸村』までやって、満足できたなっていう舞台はひとつもなくて。限界までやった、一番頑張った、一番体力使ったし、一番声出したし、一番体動かした。けど、終わってみれば、まだまだ。その繰り返しばっかりで…うん、でもそれでもここにずっといるっていうことは、何かの魅力に取りつかれてると思う。
山本:麻薬みたいな言い方するな(笑)。
全員:(笑)
松田:幸村が合戦に行くのって、ここが自分の人生、自分を証明する場、みたいなところだと思うんです。僕はというと、自分っていう存在を証明できるのはBSPだけじゃない、舞台全般でのこと。それに、BSPに足りないところってめちゃめちゃある。それでも、俺はこの仲間たちを最高だと思っている。みんなと一緒にやった時間、ぶつかった時間、怒られた時間、っていうのをみんなが共有してるっていうのが、人生でここにしかないんじゃないかなって。そういうのを共有できる場が、BSPなんじゃないかなって思います。
山本:幸村にとって戦が自分を証明する場であるのが、俺らにとっては、BSPが、証明する場所であるっていうことね。
田渕:だから、幸村にすごく親近感を覚えるのって、やっぱり僕たちって、その、いろんなものが足りない…
山本:負け戦(笑)?
田渕:負け戦ってことじゃないけど、ほんとに分が悪い、結局ひとりでは舞台を作れないから。
松田:そう、そう。
田渕:みんなが集まって、あれこれ作戦考えて、いろんな戦略で戦ったチームとしてズバンと突き抜けるわけですよ。体一つで表現するっていうことを突き詰めると、今まで見たことないものができたりすることがすごく楽しいなって。そういう部分について幸村にすごくシンパシーを感じるから、『幸村』~真田戦記~っていう作品作りに重なっていけばすごく面白いなと思う。
松田:そうですね。



松田 岳:ブルーシャトル所属:真田信繁(真田幸村) 役
田渕法明:ブルーシャトル所属:徳川家康/淀殿 役
山本健史:劇団ひまわり所属:大野治長役
大塚雅史:脚本・照明・演出家

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